
「正しい」を疑う
先日、工程内で2件の不具合がありました。原因を確認していくと、どちらも作業者の「思い込み」が一つの要因になっているように感じました。
「この材料で合っている」
「この設定でいつもやっている」
「前回と同じだから大丈夫」
作業者は、決して適当に作業していたわけではありません。むしろ、その作業をよく知っていて、「分かっている」「間違いない」と思っているからこそ、思い込みが生まれてしまったのではないかと思います。
人は一度「これで正しい」と思ってしまうと、その前提で物事を確認してしまいます。図面を見ても、現物を見ても、「どこか間違っているかもしれない」という視点ではなく、「合っていることを確認する」という見方になってしまいます。すると無意識のうちに、自分の考えに合うように見てしまうことがあります。
そこで今回、暫定的な対策としてダブルチェックを入れることにしました。ダブルチェックというと、「作業者を信用していないのか」ということではなく、作業者本人には見えにくくなってしまった間違いを、別の人が別の視点から見ることで発見する。そのためのダブルチェックです。
そして、ここで大切なのが「疑ってかかる」ことです。もちろん、これは人を疑うという意味ではなく、例えば、
「本当にこの材料で合っているのか?」
「本当にこの設定値で正しいのか?」
「本当に前回と同じなのか?」
目の前にあるものや、自分が正しいと思っていることを、一度疑ってみるということです。確認作業というのは、本来「合っていることを確認する作業」ではなく、「間違っているかもしれないという前提で確認する作業」なのではないでしょうか。
これはダブルチェックをする側にも同じことが言えます。「前の人が確認しているから大丈夫だろう」そう思ってチェックしてしまえば、二人で同じ思い込みを確認しているだけになってしまいます。第三者が確認するときには、前の人の判断をなぞるのではなく、一度ゼロに戻して、自分自身で確認する。むしろ、「どこかに間違いがあるはずだ」くらいの気持ちで疑ってかかることが、チェックする側には必要なのかもしれません。
不具合が発生したときに、「もっと注意しよう」「ミスをするな」と言うのは簡単です。しかし、それだけで不良をなくすことはできません。
人間である以上、誰にでも思い込みはあります。そして経験がある人ほど、「いつもこうだから」「今まで大丈夫だったから」「自分は分かっているから」という思い込みが生まれることもあります。だからこそ品質管理では、「人は間違えることがある」だけでなく、「人は正しいと思い込んでしまうことがある」という前提が必要なのだと思います。
人を疑うのではなく、判断を疑う。作業者を疑うのではなく、「合っているはず」という思い込みを疑う。そして、自分自身の判断さえも一度疑ってみる。「たぶん大丈夫」ではなく、「本当に大丈夫か?」と疑ってかかる。製造現場でもそうですが、間接部門の作業でも日々の自分自身の仕事でもそうです。疑ってかかる事でミスをなくし良い仕事に繋がってくるのです。


